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【コラム】"プーチンP世界"に溺れる子供たち 2009.02.26[木]

コラムでは、複数の作品を取り上げ、
その中のキーワードから"プーチンP世界"をのぞいていきます。

今回のテーマは「パーソナリティ」
各考察の中で述べたリンレンミクの性格や、
なぜ彼らが"耽溺する子供たち"となってしまったのかを考えていきます。

※「耽溺する子供たち」の総集編です。以前の内容と重複する部分も多くあります。ご了承ください。

1、2部作品巡回推奨!基本2部終了時までの考察ですが、少しだけ3部にも言及あり。
解明してないところもたくさんありますが、どうぞお付き合いください。


■結実
プーチンPの作品群を俯瞰すると、「耽溺」が大きな柱として描かれています。
最初に、「耽溺」という言葉からおさらいしてみましょう。

リンレンミクは「耽溺する子供たち」。登場時の彼らは、皆薬物に溺れていましたね。
リン:売人ドナルドから薬物を購入、「ララララ☆ハッピー☆」状態に(「ゆめをみようよ。」)
レン:クスリ、ガンジャで『夢を見るしかない』。(「ゆめをみようよ。」)
ミク:『ケミカルサイコー』で『ぶっ飛びたい』。以前から常習?(「まほうはじゃどう」)

その後、彼らが薬物に対してとった行動は作品で語られています。
リンは自力で誘惑に打ちかち、ドナルドを退けることができました。
レンは、リンによる初期化後も薬物への依存は収まりませんでした。
ミクは『もうやめられない』世界に入ってしまいました。

それでは、なぜ彼らは薬物に手を出してしまったのでしょうか?


■萌芽
3人に共通しているのが、「現実から逃避したい」という気持ちです。
リンの歌っている歌のタイトルが「ゆめをみようよ。」、これが一番象徴的だと言えます。

1.リンの「萌芽」
まずリンの「理由」から考えていきましょう。
リン編でも述べたとおり、彼女はコンプレックスを持ってこの現実とぶつかっていました。
キーワードは"2番手"です。繰り返しになりますが、(→参考:1番2番
ボーカロイドアイドルとしての順位、レンから見た気持ちの順位は、常に"2番"に置かれている。
1番にはミクが君臨し、自分の力では到底1番になることができない。
初音ミクに間違われ、レンに振り向いてもらえない。現実に対する無力感を持っていました。
トップアイドルになってスポットライトを浴び、レンが自分にかしずく、そんな"夢"をリンは見たいと思っていたのでしょう。

また、背景に"赤の時代"の存在があります。
リンは序盤、"赤の時代"という真実の記憶を隠蔽されて、"夢"のような偽のロシア時代の記憶にしがみついていましたね。
プーチンへの思慕や『ロシアに帰りたい』などがよく見られるフレーズでした。
しかし、その一方、『ヒトリニシナイデ』や『こどもはきらい』といった
「トラウマによる暴走」のような行動もたびたび起こしていました。
改竄された記憶と、"赤の時代"の記憶。
どのような技術を持って改竄がなされたのかは知る由もありませんが、
ボーカロイド達が我々の知るようなただのロボットではない以上、
(人間のような感情を持ち、自律的に人間のような生活を送る)完璧な記憶の操作は難しいでしょう。
二つの記憶がせめぎ合い、リンの精神に大きな負担がかかっていたとしても不思議はありません。

そして、これは推論にすぎませんが、
赤いリン("赤の時代"のリン)も薬物依存者だった可能性も捨てきれません。(→参考:赤と黄
「なやみむようっ!!」などで描かれる限り、「子ども」であるにもかかわらずかなり血なまぐさい「仕事」をしていた赤いリン。
精神の平衡を保つために、最初は組織から与えられ、やがて自ら薬物に手を染めていったのかもしれません。
赤いリンという前身を持ったからこそ、リンは現実逃避の方法として薬物を選んだと考えることもできますね。


2.レンの「萌芽」
次にレンです。
序盤の彼にはリンのような「どうにもならない無力感」はそれほど感じられないですし、
薬や男に溺れることを積極的に楽しんでいたようなふしもあります。
楽しんでいたのは恐らく「盗み禿同」な性格であり、元から持っていた素質だったようにも思います。
しかし、きっかけはただの好奇心ではなさそうです。

都合の悪い記憶をほとんど消去されて白紙のようになってしまったリンに比べ、
ほぼ新しい偽の記憶を書き込まれていたレンは、
偽物ではあるもののロシア時代のことを多く記憶していたようです。
ただ、レンもリンと同様の改竄された記憶と、"赤の時代"の記憶の軋轢を持っていました。
犬であった真実の過去と、(人間だった?)偽の過去は非常に大きいギャップです。
つじつまの合わない記憶に疑問を抱き、そのギャップを埋めるために
"夢"を見ていたとしてもおかしくないでしょう。

"赤の時代"と現在、どちらもレンはリンの多大な影響を受けています。
赤いリンが薬物を使用しているところを見ていた赤いレンはつねづね興味を持っていた。(意識下)
改竄された記憶内では、二人はいつも一緒。薬物使用時も一緒だった?(記憶の刷りこみ)
といった背景をもとに、リンが薬物に手を出したなら「俺も!」となるのが当たり前でしょう。
水は低いところへ流れる、を地で行くような性格ですから、はまってしまってやめられない。

そして、実際に"赤の時代"を思い出したときには、軋轢が大きな傷となってレンに襲いかかります。
大切な人が自分の目の前で命を落とす。しかも自分のせいで。
ただでさえ不安定だった精神は、その重圧に耐えきれない。
悪夢のような現実から逃れようと"夢"を見ても、見るのは"悪夢"ばかり。
寝ても覚めても"悪夢"を見続けるならば、いっそ消えてしまいたいと考えたのかもしれません。

まとめると、レンはリンのように「現実における自分の立ち位置」に失望していたのではなく、
むしろ「現実そのもの」に失望していたからこそ、薬物によって"現実"逃避をしていたのでしょう。
わからない』からこその不安を、紛らわす手段が薬物だったといえます。


3.ミクの「萌芽」
続いてミクです。
初登場時から『ぶっ飛』んだ言動行動で物語に彩りを添えていたミク。
トップアイドルであり、リンがのどから手が出るほど欲しがっていた「1番」の座に君臨。
リンやレンに比べると、"現実"に対して何も不満はなさそうです。
実際、序盤「まほうはじゃどう」などを見る限り、耽溺する理由を語る場面はありません。
ただただ『ぶっ飛びたいよ』。じゃあなぜ?

終盤の理由は明白です。
「幻覚の世界の住人」であるドナルドに会うためです。
実在しない存在(と当ブログでは定義する)ドナルドは『ぶっ飛』ばなければ会うことができません。
ドナルドへ傾倒していくにつれ、耽溺の度合いは高くなっていったといえるでしょう。
けれども、ミクはドナルドとの出会いをきっかけに薬物を始めたのではなく、
薬物に溺れていた時にドナルドと出会いましたね。
では、始めたきっかけはどこにあるのでしょうか。

ここで覚えていてほしいことは、彼女には理由がないわけではなく、言わないだけだということです。
もっと言うと、言葉に出すことができないほどの理由をミクは持っているようです。
その意味では、リンレンよりも根が深い。我々に手がかりを与えてくれません。
少ない言葉からキーワードを抜き出すと、「過去」と「本当の自分との乖離」が浮かんできます。

まず「過去」。「またあえたら☆」では、『忘れたい あなた』の存在を明かしています。
ミクの感情としては未だ『あなた』に愛情を持っているけれど、苦い思い出があるようです。
「昔のミク」がどの程度の昔なのか、そして『あなた』とは誰なのかは今後の作品を待つことにして、
ミクも過去の記憶との軋轢を持っていることがわかります。

そして「本当の自分との乖離」。
ミクはトップアイドルであるにもかかわらず、あまりそのことを前向きにとらえていません
「アイドル・初音ミク」の象徴ともいえるネギを嫌ったりする描写もありましたね。
また、ドナルドに好意を抱いたのも彼がアイドル扱いしなかったからではないかと考えられます。
高嶺の花で、誰も寄せ付けない態度は「装っていた」だけ。
誰よりも誰かを求めていたのはミクだったのでしょう。

彼女が耽溺の対象として薬物を選んだことについては、理由は不明です。
しかし、ミクは「現実における自分の仮面」に疲弊していたことは間違いなさそうです。


■土壌
耽溺せずにはいられない。
薬物以外にも、男や恋愛など「人間関係」に耽溺する3人の姿が浮かび上がってきます。
象徴するフレーズは、
リンの曲「ひとりにしないで。」と、「またあえたら☆」でミクが歌う『ひとりはくるしい』です。
愛憎の入り混じった関係から、それぞれの性格を見ていきましょう。

1.リンの「土壌」
リンはなぜレンが好きなのか?かなり難しい問です。
自分になかなか振り向かず、実生活でも『まれに見るダメ野郎』なレン。
そこまで理解していながら、それでもレンを求めずにはいられない。
恋愛なんてそんなもの、というのは簡単ですが無粋を承知で少し分析してみましょう。

ごく簡単に言ってしまえば、リンは『まれに見るダメ野郎』だからこそ、レンが好きなのです。
説明になってない?いやいや少し待ってください。

二人の関係は、依存症患者とその家族の関係に非常によく似ています。
(薬物)依存症患者(ここではレン)は、薬物が好きだから依存しているわけではありません。
どうにもならない現実と、無力な自分自身。薬物に耽溺しているときだけ、万能感を味わえる。
薬物を憎みながらも、逃れることができない。

家族(ここではリン)は、そんな患者を『あたしが何とかしてやるわ』と更生させようとする。
更生させ、自分の思うように動かすことで自分の無力さを補いたいと考えています。
ある意味では、「鎖につながれたレン」こそリンの理想なのかもしれません。
ダメ野郎』であれば、いつまでも自分のそばから離れられない。
ひとりにしないで』ほしいリンは、レンをつなぎとめるために「一番になりたい」と願います。
しかし、レンに対しては「好きだ」とはっきりと口に出すことをためらいます。
好きだと言わせたい』心理は、相手より優位に立ちたい気持ち。
薬物という鎖ではなく、自分の愛情という鎖につながれてほしい。
レンは、ロシア時代に赤いレンとして赤いリンを支えていたという「実績」もあります。

また、リンが薬物から手を引いたのには、レンをしっかりつなぎとめておくのに
自分が耽溺している場合じゃないと考えた側面もありそうです。
薬物よりも恋愛のほうがリンにとっては刺激的だったのでしょう。

リンが感じている孤独。その孤独ゆえに、レンを求めているのかもしれません。


2.レンの「土壌」
では、なぜレンはリンの気持ちを素直に受け入れられないのでしょうか。
もちろんミクへのあこがれはありますが、それはしょせんぬるいファン心理。
"赤の時代"で記憶を取り戻し、「リンに自分は釣り合わないのではないか」と考えたとしても、
それに勝る愛情を持っていたはず。
けれども、レンがリンに「好きだ」と告白したような描写はありません。

理由の一つとしては、先述したリンとの「パワーゲーム」。
リンはレンを愛情という鎖を持って縛ろうとしている。
特に「けっせんとうじつ!」のヤンデリンぶりは、リンの構成要素の一つです。
しかし、レンはその鎖を息苦しく感じている。
リンという対象に自分自身がからめとられるくらいなら、薬物のほうが「楽」。
追えば逃げるし逃げれば追う。犬の習性そのままです。

本当はリンによって支えられているからこそ、レンは存在していられるのに
それが「かっこ悪い」と思っているようです。
またあえたら☆」で決心してリンに『全てを見せる』ことも、一見自発的な行動のようですが、
結局は見せた後結論を出すのはリン任せ
同じ年齢(設定)の同じボーカロイドという立場であっても、まるで母子のような関係。
レンのリンに対する態度は、母親に反抗する子供に見えませんか?

そして、リンや自身が存在している"現実"そのものへの懐疑心。
彼の特徴として、"流れ"に逆らうことができない、翻弄されるという点が挙げられます。
けれども、レンはリンの言うような『まれに見るダメ野郎』ではないと編者は考えます。
またあえたら☆」でリンへ向けて『底辺Pから逃げよう』とつぶやき、
3部「なにもないもの。」では、『俺にはこの世界がよくわからないんだよ!』と吐露していますね。
ここから見えてくるのは、レンが"プーチンP世界"に対する不信感を持っていること。
"誰か"の手の上で踊らされていることにレンは気付いているようです。
しかも、ミクが『誰かが手を加えて 世界を壊していた』と言っているように、
"プーチンP世界"はちゃんと(?)胡散臭い世界であるようです。レンの妄想ではないということ。
翻弄されながらも"見えない糸"に気づくあたり、さすが鼻がききますね。

レンは、実は"プーチンP世界"こそが自身を守っていることに気づいていません。
気づかないからこそ、"赤の時代"の記憶を取り戻した後で見せた、リンの「本当の愛情」すら
当初耳をふさいでしまったのです。


3.ミクの「土壌」
ミクはなぜ、ドナルドに傾倒してしまったのか。
そしてなぜ、『もうやめられない』と「向こう側」の世界へ行ってしまったのか。
彼女の性格については、の部分が本当に多いです。
自信はありませんが、編者なりの"ミク像"を考えていきます。

彼女は非常に優秀で頭のよい「優等生」に見えます。
以前も述べましたが、トップアイドルで居続けるには並々ならぬ努力が必要でしょう。
しかも、どろどろとした感情が渦巻く世界に身を置くにはミクなりの鎧が必要。
鎧こそが、「高飛車でわがままなお姫様」キャラ。
「ほら、あんたたちが求めるゲーノージンってこんな感じなんでしょ?」とにっこりほほ笑むような。
しかし、このキャラはミクのニセモノ。演じているだけです。
ミクがアイドルになったのは、『ひとりはくるしい』から。
「過去」であった何かを埋めるため、『ひとり』にならないため、みんなに愛されたい。
(このあたりの動機は、レンの一番になりたいと願うリンとは真逆の考え方です)
歌姫になれば愛してくれる?かわいければ愛してくれる?
もっと、もっと私を愛して。私に孤独を感じさせないで。


そうしてどんどん高みに登りつめるほど、ミクは孤独を感じていく。
周囲には自分の顔色をうかがうイエスマンばかり。
「アイドル・初音ミク」としてしか自分を見てくれない。
どうして?私はこんなにがんばっているのに…。
疑問を抱きながらもがんばることをやめられない。
やめてしまったら、誰も私のことを見てくれさえしなくなる。
やがて「トップアイドルで居続けなければならない」といった強迫観念が生まれる。

どうして私は一番であり続けなければいけないんだろう?
いや、だめ。一番じゃなければ意味がないの!

二つの気持ちで彼女は揺れ動いていたように感じます。
「初音ミク」に対して、それを誇示するような言動と憎むような言動が入り混じっていましたから。
ミクは「初音ミク」という檻に閉じ込められていたようです。

薬物とドナルドは、ミクの「重荷」を軽くしてくれる対象でした。
特にドナルドは「初音ミク」という檻を解き放ってくれる王子さまだったようです。
しかし、ミクは今まで鎧を強くするのに精いっぱい。
ドナルドの前で鎧を脱いでしまったら、そこにいたのは
小さくて弱弱しい、一人で立つこともままならない女の子でした。


一番なんてくれてやんよ!
(3部のミクのテンションは、きっとミクの地に近いのかもしれません)

ミクは努力して、頑張って、幸せを手に入れて、そして失った。
これ以上がんばれなくなってしまった「良い子」こそが、水辺でうずくまるミクの姿なのです。


■開花
母性が強く、なんでも自分で抱え込んでしまうリン。
リンに甘えながらも反発することしかできないレン。
「優等生」であることに、倦み疲れてしまったミク。
3人の性格はそれぞれ全く異なりますが「自分自身でいたくない」という根っこは共通でした。

1部は、リンが依存から立ち上がる物語。
2部は、"赤の時代"を知り、リンが「こころ」を取り戻すことによって「本当の愛情」を知る物語。
レンは翻弄されながらもリンの「本当の愛情」に触れて、気持ちを受け入れることができたようです。
リンが「こころ」によって正しく救われたように、3部でミクも救われるのでしょうか。

彼らが開花する日を待ち望むばかりです。
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