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「アヒル童話」ひっそりレビュー。(その3) 2011.06.16[木]

当ブログにおいでいただき、ありがとうございます。
捻れたアヒルの新譜「アヒル童話」を聴いてみての感想など、
ざっくり簡単に書いていきたいと思います。
(編者は音楽に関して全くの素人なので、その辺りはご容赦を!)

テーマ・アイテム編の記事はこちら
楽曲編(前半)の記事はこちら

今回は楽曲編の後半戦。
ご興味のある方は、「続きを読む」へどうぞ。




  1. はるひP / アネモネ / テーマ:KHM117「わがままな子ども
    8曲目は雰囲気ががらりと変わる。詰め込まれた世界から、広がる世界への転換。
    「曲者揃い」捻れたアヒルにおいて、はるひPの作る音楽は逆に"異質"なのかもしれない。
    自己主張でしのぎを削る作品群とは一線を画す、控えめな綺麗さを持った作品である。
    題材である「わがままな子ども」は、寓話としても異質。死んだ子供の手が墓場から突き出す話だから。
    タイトル「アネモネ」は、埋められても埋められても出てくる小さな手を表しているのだろうか。
       - - - -   - - - -   - - - -
    今までの自分のイメージは、はるひP=「ピアノの旋律が印象的」な方でした。
    実際、ギターが効果的に使用された「アネモネ」を聴いても、イメージは崩れていません。
    "心臓のちょっと上がきゅっと反応する"感じははるひPじゃないと出せない気がします。
    しかし、「乖離-Reborn-」のような、微かにざらりとしたアンビエントや、「ベリーベル」のように硬質で
    メロディアスなエレクトロニカ、実はたくさんの引き出しを持っている方なんですよね。
    だからなぜ「ピアノの旋律が印象的」なイメージがあったのかを考えてみたのですが、
    ピアノを歌わせることで「印象的な旋律を作ることができる」方だからなんでしょう。
    メロディという屋台骨がしっかりしているから、曲調で遊んだとしても安心して聴けるんだろうなあ。

    はるひP
    マイリスト



  2. ジョイメカP / 昏く深い森 / テーマ:KHM15「ヘンゼルとグレーテル
    9曲目は、子どもたちが森に置き去りにされ、魔女が棲むお菓子の家を見つけるあの話が題材。
    あまりに有名なモチーフ。子どもが描く夢の一つが”お菓子の家”であることは、きっと間違いないだろう。
    しかし、ジョイメカPは(チップチューンという手法にぴったりであろう)メルヘンでポップな部分を
    ばっさりと削ぎ落して作品を作りあげた。いやはやひねくれている。
    ポップさをはぎ取られた「おとぎ話」に残ったものは、「昏く深い森」。
    さまよう子どもたちを森の奥へ誘ったのは魔女ではなく、森そのものだとでも言いたげだ。
       - - - -   - - - -   - - - -
    グリムとチップチューンって、どうにもハマり過ぎちゃう感じですね。
    一歩間違えると、そのままRPGの世界になってしまいそうですから。
    そのさじ加減の結果が「お菓子抜き」ってことでしょうか。
    前作が、抜けるような青空を想起させた作品だったので非常に対照的。
    ジョイメカPの音は、「キッチュでポップでノスタルジック」な素材を組み合わせているにも関わらず、
    いつもどこかで土のやわらかな匂いを感じます。なんででしょうね。
    自分は「蒼穹の条例」がすごく好きで、「一人称」をテーマにレビューを書いてからアップしようとして結局ボツにしたこともありました。
    もし機会があったら蔵出ししようかなあ。

    ジョイメカP
    ニコニコ大百科 / マイリスト



  3. ypl / Open / テーマ:KHM200「金の鍵」
    10曲目。グリム童話が幾度も編纂されて、現在の200話になったときの”最後の一編”が題材である。
    まずしい男の子、雪の中の小さな鍵、鍵穴があうはずの小箱。最後は読者に想像をゆだねて終わる物語。
    ゆだねられた作者yplさんが再構築した「Open」は、手にした鍵で箱を開けられずにいる『僕』のつぶやき。
    降りしきる雪は音を吸い込んで、箱も鍵も『僕』さえも淡い白で塗りつぶしてしまう。
    重なりあい融けあう音はずっと響いているのに、なぜか「静謐」という言葉を思い出させる。
       - - - -   - - - -   - - - -
    自らの作った世界に引き込むのではなくて、
    聴いている人の世界を一変させてしまうのがyplさんだと思います。
    耳に入ったはずの物語が、言葉に解体され、音に解体されて、残った響きさえもするりと逃げてしまう。
    決して綺麗なだけではない、骨っぽさも感じられるのに不思議です。なんでこんな音が作れるんだろう。
    淡い色に染まる紗が敷き詰められた空間にぽつんと置かれて、
    紗をかき分けてひたすら進んでいかなければならないような気持ちになります。
    かき分けてもかき分けても自分のよく知る日常へは帰れないのに、包み込まれる感覚はなぜか心地良いんです。

    ypl
    ニコニコ大百科 / マイリスト



  4. ぷれいらP / かしこ / テーマ:KHM34「かしこいエルゼ」
    11曲目は、グリム童話に複数見られる「かしこい」シリーズからの一編が題材である。
    「かしこい」シリーズには二つの種類があり、一休さんのようなとんちでピンチを切り抜ける主人公型と、
    とんちんかんで自らピンチを招いてしまう、シニカルな意味での「かしこい(笑)」主人公型。
    もちろん「かしこいエルゼ」は後者である。ある種の笑い話、教訓話とも言えるだろう。
    しかし、ぷれいらPが切り取った要素はそのどちらでもない。
    知らぬ間に鈴を付けられたことで溶けていく、エルザのアイデンティティだ。
       - - - -   - - - -   - - - -
    曲が展開していくにつれ、音は増え激しさを増していくのに、
    逆に自分の何かがしんと研ぎ澄まされていく気がします。
    ぷれいらPの曲は、言葉からの感情移入を全然求めてこないんですが、
    音からは感情を呼び覚まさせるような、でもどんな感情を呼び覚ませばいいのか分からない
    微かなさざ波を感じます。
    何度も聴いていると、すごく混乱しているのに、頭のどこかが妙に冴え渡って
    自分も「かしこいエルゼ」になってしまいそう。

    ぷれいらP
    ニコニコ大百科 / マイリスト



  5. ヒッキーP / 屠殺ごっこの後で / テーマ:「子どもたちが屠殺ごっこした話
    12曲目は、ノイズの中に暴力的なまでのポップさをのぞかせる「屠殺ごっこの後で」。
    グリム童話の中でも、あまりに血なまぐさいという理由で削られた問題作が題材である。
    血の匂いのする話が多いグリム童話だが、こんなにも救いも教訓もなく
    「無邪気な残虐性」だけが際立つ作品を、なぜ「童話」として収録しようとしたか疑問だ。
    しかもヒッキーPは”その後”まで描こうとしている。
    『家畜さん』を決めた子どもたちが、屠殺ごっこの後で『人間さん』を決めるラストは圧巻。
       - - - -   - - - -   - - - -
    各メンバーが「なぜこの曲を選んだのか」を想像しながら、つらつら文章を書いているんですが
    ヒッキーPのチョイスは直球過ぎて、なんかもう「ですよねー」って言いたくなってしまいます。
    無垢で純粋だからこそできてしまう暴力は、
    『思春期特有のナイーヴな感性を、耳をつんざくノイズでくるみ、
    聴く者の胸に鋭い痛みを感じさせるNW然とした作品を得意とする』ヒッキーP(初音ミクWikiより)と
    親和性が高いに決まっていますもの。

    ヒッキーP
    ニコニコ大百科 / マイリスト



  6. kous / 灰かぶりシンドローム / テーマ:KHM21「灰かぶり
    ラストを飾るのはシンデレラ。女の子が一度は夢見るであろうおとぎ話だ。
    かわいそうな私、望みを叶える魔法使い、きらびやかなドレスに舞踏会。
    迎えに来るのは、「みすぼらしい私」でも選んでくれる白馬に乗った王子様。
    女性の成功譚を「シンデレラストーリー」と表現するほどにおなじみの題材である。
    しかし、kousさんはこの曲で「シンデレラコンプレックス」を描いている。
    “外からくる何かが自分の人生を変えてくれるのを待ち続けていた”女の子が、ガラスの靴を脱ぎ捨てる歌だ。
       - - - -   - - - -   - - - -
    本作品は、VM16で頒布された「機械の花サナトリウム」収録「灰かぶりシンドローム feat. ef」の
    ミクバージョンです。
    聴けば聴くほど、kousさんの音はすごい勢いで進化してきたんだ、と改めて実感させられます。
    そして、アヒル童話の世界にどっぷりと浸ってしまった私たちに
    「魔法なんてないんだよ、君の世界にお帰り」と現実を突きつけるエンディングでもあります。
    けれど、後ろ髪をひかれながら、現実世界へ向かう私たちの背中を押すのは、
    おとぎ話をテーマに歌う、虚構のアイドル初音ミクなんですよね。
    してやられたなあ。

    kous
    ニコニコ大百科 / マイリスト



というわけで、テーマ+パッケージ+全13曲をレビューしてみました。
「アヒル童話」を入手してすぐ、徹夜明けの頭でガーっとまとめて書いてます。
恐るべし徹夜ハイ。なので、乱文が目立つことをご容赦ください。
間違い等あればご指摘いただけると助かります。


捻れたアヒルのみなさん、素敵なアルバムをありがとうございました。
次回はkalP、アンテナPの新作も聴けたらうれしいです!
そうそう、CDを「入手したよ!」という方、感想を教えてくださいね。
「してないよー」という方、通販を予定しているそうなので、興味があればぜひ。

そして、この文章を最後まで読んでくださった皆さま。
お付き合い下さり、ありがとうございました!



次回は「うそつきはだれ?」考察をはじめます。

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