FC2ブログ
2020 0112345678910111213141516171819202122232425262728292020 03
TOP > 3部考察 > 【考察】「こころにこえを。」3部11曲目(28)を読み解く【その3】

【考察】「こころにこえを。」3部11曲目(28)を読み解く【その3】 2011.10.28[金]

動画&歌詞その1その2その3その4その5

【個人的考察】つづき
少女の残した「問い」を考えつづけた、元・少女の出した答えとは。

「こころにこえを。」「こころにこえを○」両作品を「こころにこえを」2部作と呼び、
横断的に考察していきます。
「こころにこえを」2部作とその2とまでをご覧になってからお読みください。


今回のテーマは、イリーナがルカに残した「傷」についてです。

■あの子と私の罪と罰
過去編のルカを読み解くにあたり、いくつかのキーワードが出てきましたね。
とりわけ重要なのが、「プーチンへの愛情」と「イリーナへの思い」です。
二つの項目について、各曲・時系列でのルカの心情をまとめてみましょう。


ここでは、「ねむりたいのに!」でプーチンへの愛情よりも、イリーナへの思いが勝ったこと、
「たびにでよう!」では、イリーナへの思いは強いものの、
かつての恋人を忘れられない女心がくすぶっていることを押さえておきましょう。

では、ルカはなぜこんなにも「データとしてのイリーナ」に執着するようになったのでしょうか。


■あの子と私と氷の世界
自身の命をかけてまで"黄色いスカーフ事件"を世間に知らしめたいと行動する。
この、ルカの度を越しているとも言える、「イリーナへの執着」。
実は、そう見えるだけで本質は違うのだと編者は考えます。
先に編者の考えを先に述べてしまいますね。

ルカは、特にイリーナが好きだったわけではない。
過去の「少女だった私」をイリーナと重ね合わせ、「少女だった私」を救うための
自分探しをしていただけである。


過去はあの子達と同じだった』とルカは呟きます。
ルカがクスリを打ち、こころを壊していた、部下の子どもたちと
自分自身が同じ境遇だったことを明かしています。
ここで、「こころにこえを。」で明かされたルカの過去をまとめてみます。



少女イリーナと過去の少女ルカは似通った人生を歩んでいたようです。
"黄色いスカーフ事件"前のルカは、生きていたイリーナと自身の境遇を重ね合わせて
親近感を抱いていたことがうかがえます。
イリーナを優秀な兵士に仕立てあげていくことは、ルカの密かな喜びだったのかもしれません。

けれども、重ね合わせていた軌跡は大きく外れました。
"黄色いスカーフ事件"が起こったからです。
イリーナは死に、ルカは"イリーナが選ばなかった未来の姿"、先駆者としての自分を
疑問視する
ようになりました。

過去はあの子達と同じだったけど わたしは 運命に背けなかった
運命に背』くとは?そう、イリーナが自ら死を選んだこと。



孤児になった少女が『ロシア』で日々を生きるためには、
孤児院に入り『敵を壊して』自分の居場所を作るしかなかったのでしょう。
しかし、そこは『冷たい世界』でした。
人殺しを強要される死と隣り合わせの危険な世界。
子どもらしい夢や希望は、恐怖感の軽減と引き換えにクスリで眠らされてしまう世界。

少女だったルカはこう思ったことでしょう。
逃げ出したい。明るい世界で幸せに暮らしたい。
いつかいつか』こんなところから逃げ出してやる…

恐らく辛いことがあるたび、少女ルカは『いつか』と思いつづけていたのではないでしょうか。

でも、ルカは組織から離れることなく大人になりました。
本当の望みを心の奥底へ押し込めて、
叶えられそうな望みをかなえるような努力をしてきたのだと思います。
叶えられそうな望みとは、きっと、
まず生き延びること。組織の中での地位を向上すること、強い男に愛されること。
それはかなえられました。彼女の努力の賜物でしょう。
権力と擬似的な父性と快楽を与えてくれるプーチンとの『愛に溺れ』、
子どもたちにクスリを打ち続けるときに、ルカ自身の『ココロ』も『眠らせて』いたのかもしれません。
歳を重ね』るごとに、『いつかいつか』とつぶやく少女ルカの声は小さくなっていったんでしょう。

それが生存のための『運命』だとあきらめて。


■嘘つき姫
うそつき。
本当の望みを語る少女ルカの声は、小さくなっていったわけではありませんでした。
ただ、大人になるにつれて耳を塞ぎ、聞こえないふりをしていただけ。
少女ルカを再びルカ女史の前に引きずり出したのは、そう、イリーナの自殺です。

だからあの子
きっと最後に嘲笑ったんだ
逃げる事さえ出来ず
そこに居続けたわたし…哀れだから


ルカにとって、イリーナがしたことは文字通り、死を「イリーナが自ら選んだ」行為であり、
「ルカにはできなかった」行為なんですよね。
少女ルカが望んだこと。
汚れた冷たい世界から逃げ出したい。たとえそれが死を意味することであっても。
でも、彼女は死を選べなかった。
(それが当り前だと思います。編者は死を礼賛してはいません)

イリーナがあのときなぜ最期に『笑顔』を見せたのか?その本当の理由は分かりません。
しかし、ルカには自分を嘲笑っているように見えたんです。
あたしはあなたのようにはならない」と。
そしてルカは決心しました。

少女イリーナを救えなかった代わりに、少女だった自分を救おう。
イリーナが生きられなかった(生きることを選択しなかった)未来に生きる自分に
今度こそ嘘をつかない生き方をしよう。


このときから、イリーナはルカの天使になったのかもしれません。
ルカの希望、ルカの良心、ルカのなくしてしまった少女時代、ルカが手にした希望の翼…そういったもの全てを
黄色いスカーフ事件、イリーナと犬の物語に託して世界に知ってもらいたい。
イリーナのように選べなかった自分だからこそ、伝えることができる。
そして戦わなければならないんだ。昨日までの嘘をついていた自分に。


■プラネタリウムは綺麗だけど本当の星ではないんだよ
でもね、三つ子の魂百までなんです。
イリーナのように、理想のため死ねなかったルカなんです。
今のルカは夢見がちな少女ではなく、
小賢しい頭と肉体と刹那主義で血腥い現実を渡ってきた女なんですよね。

テッパンノフに捕まって、理想に燃えていた気持ちはだいぶしぼんでしまったのでしょう。
さらに言うと、捕まる前からこんな気持ちだった可能性もあります。
イリーナのこと、かつての私のことをちょっとだけど世界に知らせることができた。
もう満足。もういいや。逃げつづけるなんて無理だもの。

そう自分の可能性に線を引いてしまったからこそ、テッパンノフにおとなしく捕まったのかもしれません。
死んでもいいや。

本当ならば、「たびにでよう!」の最後に
テッパンノフがルカをすぐに殺してくれるのが理想だったんだと思います。


あの銃口から、銃弾が出てルカの心臓を貫いていたら、ルカは幸せに死ねたはずなんです。
義憤に駆られ、正義を貫いた者として、そして何も知らずに。
しかし、銃口から飛び出したのはバラの花。


思わぬ猶予を手にしたルカは、我に返っちゃったんです。

殺されるのは嫌だ。私は正しいことをした。
なのになんで救われないの?
なんであの人は来てくれなかったの?
なんでなんでなんで…


テッパンノフと列車に乗った彼女は考えるのをやめています。
く る し い か な し い ぜ つ ぼ う か え し て
く す り で と べ る わ こ わ く な い わ よ



プーチンに見捨てられた悲しみ、制裁へのどんよりとした恐怖。
一度は手にしたはずの翼(希望)はもぎ取られてしまった。
そしてもぎ取られた翼は、イカロスの翼のように偽りのものだと気づいてしまった。
(私はイリーナにはなれない)
そのつらさから逃れるためには、長年手にしてきたクスリに頼るしかない。
(忌むべき習慣としてきっと逃亡中は絶っていたであろう。人はそう簡単に生まれ変われない)
どこからか聞こえてくる子供たちの笑い声は薬物でトリップしたルカの幻聴。
ルカを嘲笑いつづけます。

やっぱりあたしはあなたになりたくないわ
イリーナはルカに 絶望と希望、そして絶望を与えたのです。


続きます。≫その4
関連記事

COMMENTS

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する
«  | ホーム |  »