【考察】「なやみむようっ!!」2部6曲目(14)を読み解く【その2】 2009.01.09[金]
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「またあえたら☆」でとったレンの行動と、「ぬすみはげどう?」で明かされたレンの心情、
「なやみむようっ!!」はレンに対するリンのアンサーソングです。
■リンは歌う
『思い出す あの頃』。リンは取り戻した記憶を振り返ります。
ここで注目していただきたいのが、一貫してリンは"現在のリン"視点で歌っていることです。
「ぬすみはげどう」のレンは、ロシア時代の記憶にからめとられていました。
過去に起きたことだけれど、未だ進行中。
心はタイムスリップして、幾度も『あの頃』をやり直そうとする。
けれど、結果は同じです。
赤いレンはスカーフを盗み、撃たれ、赤いリンを巻き添えにする。
起きた悲劇が傷だとしたら、レンの傷口からはまだ鮮血があふれていると言えましょう。
"過去"という閉じたループの中で身動きが取れない状態。
『俺が利口にしてたなら 君も死なずに済んでたなorz』
あのとき、ああしていれば。
赤いレンと現在のレンは未分化です。
比べて、リンはどうでしょう。
一番端的なのが、文字の色です。
黄色。
過去の記憶に深く沈み込んでいるとき、または感情が暴走して過去が表面化してきたときは
いつも文字は赤色でしたね。
しかし、「なやみむようっ!!」は全編通して黄色です。
赤いリンと現在のリンの分化がきちんと行われていることがわかります。
リンの傷は癒え、そして懐かしく過去を振り返ることができる。
この歌は、ロシア時代の赤いリンでも、過去にとらわれたリンでもない、
我々の"鏡音リン"が歌っているのです。
■思い出
まず、レンに『全てを見せ』られる前の記憶は、どのようなものだったのでしょうか。
推測の積み重ねではありますが、少しまとめてみましょう。(→参考:剥がれた日常、滲みだす過去)
- 断片的
これは、1部前半でよく見られた特徴です。
暗号のような単語の羅列、何かロシアに関係はあるらしいけれどまったく意味の取れないもの。
リンが歌っていた「ロシア」は細切れのような記憶だったといえます。 - プーチンへの傾倒
リンの言う"プーチン"が何者かまでははっきりしませんが、名前は頻出していました。
"プーチン"への敬意と畏敬の念、そしてプーチンの下で何か仕事をしていたことが読み取れます。 - 幸福な日々
『会いたい プーチン様 にゃ♥ 帰りますわ☆』(「しあわせなの!」)
など、「ロシアはとてもいいところだった。ロシアに帰りたい」という気持ちを多く歌っています。 - レンとの蜜月
ここが真実の記憶"赤の時代"と大きく異なる点です。
レンと二人だけでいられた時代、お互いのことだけを見ていた時代(→参考:鏡合わせの二人)ということは相違ありません。
これらの手がかりから、『全てを見せ』られる前のリンの記憶は
プーチンを頂点とする組織に属していた。
相棒であるレンと一緒に何らかの敵を倒していた。
敵を倒すことは使命であり、何の迷いもなかった。
レンとはいつも一緒で、それがとても幸せだった。
事実関係はあやふやなまま、リンはふわふわとした記憶にすがっていたことがわかります。
しかし、この記憶は正しくは「いっしょじゃない」までのリンの記憶なんです。
「けっせんとうじつ!」の暴走後、「いっしょじゃない」で過去の記憶が少し戻ってきましたね。
過去のリン(赤いリン)が、
どんな思いで敵を倒していたのか、本当は何を望んでいたのかを
実はおぼろげながら思い出していたのではないかと編者は考えます。
リンが「いっしょじゃない」を歌うにつれ、
深い記憶の底から、しだいに過去が浮かび上がっていっているように思えませんか?
「なやみむようっ!!」とこの作品との符合は後述することにして、
ここでリンは「ミクの歌をレンと一緒にラジオで聴いていた」という瑣末な(しかし彼女にとって非常に重要な)出来事まで思い出しています。(→参考:「ラジオのミクは昔のミクです。」)
「いっしょじゃない」後、『全てを見せ』られるまでに
さらにリンが記憶を取り戻していたとしても不思議はありません。
(なぜ、消去されているはずの過去の記憶を持っていたのかは謎のままですが…)
いうなれば、「過去を取り戻す」という大きな跳躍の前にリンは準備運動を十分していた。
「あなわをちょーだいっ!」のレンは、全く準備運動をしていなかった。
沈み込んだレン、前を向いたリンの差はここも大きな要因だったのかもしれません。
■改竄されるべき記憶
『あたしまだ ヒトだったのよ』リンは語ります。
赤いリンは人間であり、赤いレンは犬でした。
この事実は、恐らく『全てを見せ』られた後に初めて知ったことでなないかと編者は考えます。
「いっしょじゃない」の時点でそこまで思い出していたのなら、
「またあえたら☆」でリンがかける言葉はもっと違うものになっていたはずです。
消去されていた記憶は、暴走によって表面化しました。
改竄されていた記憶は、レンの"引き金"でしか取り戻せませんでした。
ここから導き出されるのは、
「記憶の消去」よりも「記憶の改竄」のほうが強い"縛り"の元に作られたということです。
となると、記憶を大きく左右するレンとの日々は、
"誰か"の意志によって意図的にリンに植えつけられたものということになります。
過去の記憶を「文字が書き込まれたノート」と例えると、
ほとんどの文字は消しゴムで消されている状態。
ところどころある消え残りがリンの断片的な記憶と言えます。
ですが、消されていない部分があった。それがレンとの日々です。
ただしそれは、誰かが書き直した文字だった。
前後関係を書き換え、場所を書き換え、登場人物を書き換える。つじつまが合うように。
ただ消しゴムで消すのとどっちが大変でしょうか?
乱暴に例えると、記憶だって同じだと言えます。
どのような技術を用いるのかは全く分からないけれど、
よほど何か目的がない限り消してしまったほうが簡単ではないでしょうか。
しかも、レンも同様の処置が施されていたのですから。
レンが人間で、リンと一緒に戦っていたという「改竄された記憶」。
誰によって何のために作り出されたのでしょうか。
■GIFT
『せめて君がヒトなら』、赤いリンの心情を回想した現在のリンの言葉です。
君はもちろん赤いレンのこと。
なぜ赤いリンがそれを望んでいたのかは後述するとして、
「改竄された記憶」に迫っていきます。
犬であるところの赤いレン。
赤いレンがヒトだったらいいのにと願う赤いリン。
改竄された記憶は、まさに赤いリンが『望んでいた世界』。
(本当に赤いリンが『望んでいた』のは、実は別のところにあるのですが…後述します)
逆の見方をすれば、
記憶を改竄した"誰か"は、赤いリンが望んでいた世界を作り上げる必要があったとも取れます。
それはなぜか?
一つはインプリンティング(刷り込み)でしょう。
ロシアはいいところ、プーチンは尊敬する人物、使命は絶対。
だって、レンと一緒にいられるんだもの。
自分の記憶は価値判断の基準になりますから、それをいじってやるだけで
簡単にリンを動かすことができるでしょう。
『望んでいた世界』の記憶は、現在のリンにとってのエサ。
馬の前にぶら下げられたニンジンのようなもの。
"誰か"がリンに何をさせたかったのかはまだ明かされていませんが、
リンが「ロシアへ帰りたい」と何度も訴えていることから、
"誰か"はリンが目的を果たしたらロシアへ戻したいと考えていたのかもしれません。
さあ踊れ、私の手の上で。
そうすればいい夢を見せてあげよう。
もう一つ、こちらのほうに編者は救いを感じているのですが、
"誰か"からの贈り物ではないかという考え方です。
撃たれた子供の記憶を取り出し、ボーカロイドとして生まれ変わらせる。
一緒に連れていた犬も、ボーカロイドの男の子として生まれ変わらせる。
並大抵の技術でできるものではないでしょう。
リンが『工場に帰りたい』(「さくらのしたで☆」)とつぶやいている、"工場"そのものでなされたことなのかは不明です。
ただ、"工場"のような数多くの人の手が存在するプロジェクトによって、
リンレンがボーカロイドとして「再生」したのではないかと考えます。
(プロジェクトの頂点にいるのは"プーチン"ではないかと推測しますが…謎です)
ある目的があった。
そのために、死んだリンをボーカロイドに生まれ変わらせようと誰かが決めた。
都合の悪い記憶は消してしまえと誰かが言った。
リンをうまく操るために、レンを作れと誰かが言った。
そして、
誰かが美しい夢をリンとレンに贈った。
まるで「いばら姫」のようです。
悪い魔女が「糸巻きの針に刺されて死ぬだろう」と呪いの言葉をかけたあと、
小さな良い魔女が「刺されても、百年の間眠りにつくだけです。王子様のキスで目覚めます」と
救いの手をそっと差し伸べるような。
その結果、レンを苦しめることになるのですが…。
続きます≫寄り道はその2.5 考察ならその3


